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論文の追試 05 — PUB-2026-005 公表後は検出されず

トレンドフォローは、
為替でまだ効くのか

「上がっているものは、もう少し上がる」。過去12か月の方向に張って1か月持つ、いちばん素朴なトレンドフォローです。 2012年の論文(Moskowitz・Ooi・Pedersen)は、これが株・債券・商品・通貨の58銘柄すべてで効いていたと報告し、CTA(トレンドフォロー型のファンド)の理論的な支えになりました。 同じ規則を9通貨で2026年まで回すと、論文の期間は SR 0.77。2010年以降は -0.08 です。

規則 Moskowitz-Ooi-Pedersen (2012) JFE 104(2) 通貨 9通貨 対USD 期間 1985-01〜2026-08・月次 研究ID PUB-2026-005
論文と重なる期間(1985〜2009)
SR 0.77
t 3.79。論文の強い結果を再現
標本外(2010〜2026)
SR -0.08
t -0.34
個人のMT5口座(標本外)
SR -0.31
スワップの上乗せと売買コストを控除

01規則:過去12か月の方向に、変動の大きさで量を決めて乗る

毎月末に、各通貨の過去12か月の値動き(金利差を含む)を見ます。プラスなら買い、マイナスなら売り。 量は、その通貨の最近の変動の大きさで割って決めます(年率40%の変動になるように)。静かな通貨は多めに、荒れている通貨は少なめに持つということです。 1か月持ったら、また判定します。

論文は1985〜2009年を評価期間とし、通貨についてはこの規則のアルファの t 値が3.41だったと報告しています。 私たちは同じ通貨9本・同じ規則で、FRED の日次データから組み直しました。

02論文の期間は、再現しすぎるほど再現した

時系列モメンタムの累積リターン
図1:時系列モメンタム(12か月)の累積リターン(単利・コスト前)。2009年までは一本調子で上がり、2010年以降は上下を繰り返して元の水準に戻る。点線は個人のMT5口座で同じ売買をした場合。

1985〜2009年は年19.9%・SR 0.77(t 3.79)。 図1の左半分は、トレンドフォローの教科書に載っていそうな形です。この期間を見て規則を採用した人がいても、責めることはできません。

032010年から、右肩上がりが止まる

表1:期間ごとの成績(紙の上=コストなし)。t はHAC(3か月ラグ)。論文の公表前の2年も、公表後の14年半も、プラスは残っていない。
期間年率SRt
1985〜2009(論文の評価期間)+19.9%0.773.79
2010〜2011(標本外・公表前)-15.2%-0.55-0.77
2012〜2026(公表後)-0.3%-0.01-0.04
2010〜2026 個人のMT5口座-7.7%-0.31-1.35

年ごとに見ると、2015年(+36%)、2020年(+28%)、2022年(+38%)のように大きく勝つ年は今もあります。 ドル高・円安が一方向に進んだ年です。ところがその間の年に、ほぼ同じだけ負けています。 2024年と2025年はそれぞれ-20%・-19%でした。 負けた年の数を数えると、1985〜2009年は25年中5年、2010〜2025年は16年中10年でした。1年あたりの負けの大きさは、むしろ昔のほうが大きい(負けた年の平均で−20%と−15%)。 トレンドが出る年に勝つことは変わっていない。変わったのは、負ける年の多さだと読めます。

信号の向きを通貨ごとにランダムな時期へ入れ替える反証でも、実際の信号は偶然と区別できませんでした(p = 0.89)。

04個人口座では、量を増やすほど上乗せが効く

この規則は変動の小さい通貨を多めに持つため、資金に対する建玉の合計は中央値で約4.8倍になります。 スワップの上乗せ(ブローカーが金利差から差し引く分)は建玉に比例して効くので、紙の上の年-2.1%が、個人口座では年-7.7%まで下がりました。

05読み方と限界

同じ FRED のデータで52週のチャネルブレイクを検定した過去の研究(C026)でも効果は見つからず、2010年以降の為替は当研究所にとって見慣れた期間です。 その意味で本研究は「未知のデータでの検定」ではなく、論文の規則を、論文の数字どおりに組んだときに何が起きたかの記録です。

200か月あっても、論文の効果が6割減った水準(SR 0.3前後)を見つけられる確率は3割程度です。「トレンドフォローは死んだ」とは言えません。 言えるのは、論文の水準の効果は2010年以降の9通貨には見当たらず、個人口座のコストでは負けになった、ということです。 8本の追試をまとめた Holm 補正後の p 値は1.00です。

この検証の途中経過

トレンドフォローの追試を始める前に、何割くらい残っていると予想していたかは note に書いています。

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どんな「合図」なら手を出す価値があるのかを、150件の検証から条件として整理した巻です。トレンドに乗る合図が、なぜ時代によって効いたり消えたりするのかも扱っています。

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検証条件: 為替=FRED H.10 の日次、9通貨(JPY・EUR[1999年以降]・GBP・AUD・NZD・CAD・CHF・SEK・NOK)対USD/ シグナル=過去12か月の超過リターン(為替変化+利用可能だった金利差)の符号/建玉=年率40%÷事前ボラティリティ(日次リターンの指数加重分散、重心60日×261の平方根)/ 1か月保有・通貨は等加重/紙の上=コストなし・金利差込み/個人口座=7通貨、スワップはブローカーの上乗せ(ECN系口座のMT5実測)込み、建玉の変化量×往復2.0pip を控除。 判定基準は結果を見る前に固定し、独立した監査の事前レビューを経て実行。 掲載した数値はすべて過去データに対する集計であり、フォワードテスト・実口座運用の結果ではありません。

免責: 本ページは検証プロセスの開示を目的とした研究ノートです。投資助言ではありません。特定の金融商品・取引業者の利用を推奨するものではありません。 バックテスト・過去データの集計は将来の利益を保証するものではありません。FX取引には元本割れのリスクがあります。 図表はすべて実測データからPythonで描画したものであり、生成AIによる作画は含みません。