R131でJPYクロスの共和分が全滅し、Discovery 42は「JPYが非定常レジームを移動し続けたせい」と解釈しました。しかし科学的には、この解釈を反証可能な形で検証しなければなりません。もし本当にJPYが犯人なら、JPYを抜けば共和分は戻るはずです。
そこでユニバースを非JPY・USD建ての{AUDUSD, NZDUSD, EURUSD, GBPUSD, USDCAD}に変え、C(5,2)=10ペアのD1ローリングADF率(IS期間・window=90を主)を測定しました。本命は高相関コモディティ通貨間のAUDUSD-NZDUSD、対抗はEURUSD-GBPUSDです。リターンを参照しないPhase 0スクリーンなので、禁止⑦には抵触しません。
結果は仮説を裏切りました。生存ペアはゼロ本。しかも決定的なのは、非JPYの最高値がR131のJPY最高値を下回ったことです。
| ペア | 系統 | ADF安定率 |
|---|---|---|
| NZDUSD-EURUSD | 非JPY(最高) | 21.0% |
| EURUSD-GBPUSD | 非JPY(対抗) | 18.7% |
| AUDUSD-NZDUSD | 非JPY(本命) | 13.8% |
| AUDJPY-NZDJPY | 参考:R131のJPY最高 | 25.7% |

JPYを抜いても共和分は復活せず、むしろ悪化した。「JPYの非定常性が原因」という仮説は反証されました。
JPYが犯人でないなら、犯人は何か。残るのはFX日足という時間スケールの効率性そのものです(Discovery 43)。日足という遅いスケールでは、2通貨の相対価値の乖離は速やかに裁定され、平均回帰を取りにいけるほど安定した共和分均衡が——JPY系であれ非JPY系であれ——構造的に成立しません。
これはアカデミックな知見とも整合します。為替の裁定ルール(StatArb)の多くは、White の Reality Check のような厳密な多重検定をかけると非有意になる、と知られています。当研究所の3連敗(R125/R131/R133)は、その教科書的事実を自前のデータで踏み直した記録でもあります。
JPY系・非JPY系のどちらもD1共和分は不在。事前ADFスクリーンは、コスト・サンプル以前の段階で全FX日足ペアを落とす強力な早期ゲートである。残された理論的可能性は(a)時間スケール変更(H1/M15=Epps効果とコスト悪化)、(b)Era変更(Modern Era=N不足)、(c)long-history Era(2015-2025・別ID)だが、3連敗とReality Check警告を踏まえ、StatArbへの追加投資は慎重にすべきである。
脱・円キャリー依存(v2-8)は、StatArb以外の軸——キャリー多ペアMON拡張・ボラ軸・外部データ条件付け——で達成する。一つの軸に固執せず、ダメな軸を早く・きれいに畳むことが探索ポートフォリオの健全性を保つ。
R133の価値は、撤退の仕方にあります。事前に定めた撤退条件(プロトコル§7)どおり、Phase 1をスキップし、OOS2025を一度も開封せずにクリーンに撤退しました。「ダメだと分かったら、最後のホールドアウトを無駄に消費せず畳む」——これは負けですが、規律ある負けです。3連敗を一本の統合記事にまとめ、失敗の地図として公開しています。畳んだ軸の記録は、将来同じ場所を再訪する誰かの時間を節約します。
R125 → R131 → R133 の三連敗は、診断が一段ずつ深まる連鎖でした。統合記事でその全体像を読み、脱・円キャリーを別の軸で達成した生存ロジックをご覧ください。
検証条件: 対象=非JPY USDベース10ペア(AUDUSD/NZDUSD/EURUSD/GBPUSD/USDCAD)/D1 Phase 0 ローリングADFスクリーン(w90主・採用閾値50%)/OOS2025未開封で撤退。 掲載数値はバックテスト・統計検証の実測値であり、フォワードテストは実施していません。
免責: 本ページは検証プロセスと棄却記録の開示を目的とした研究ノートです。投資助言ではありません。バックテスト結果は過去データに基づくものであり、将来の利益を保証しません。FX取引には元本割れのリスクがあります。図表はすべて実データ(検証レポート)からの再描画であり、生成AIによる作画は含みません。