R125の本命(GBPJPY-EURJPY D1)の死因は統計検出力の不足——年6〜8取引では証明できない、というものでした。自然な処方箋はトレード機会を増やすことです。JPYクロス5通貨(USD/GBP/EUR/AUD/NZD のJPY建て)からC(5,2)=10ペアの共和分スプレッドを作り、ポートフォリオとして同時に運用すれば、各ペアが低頻度でも合算で十分なNが得られる——そう設計しました。
ただし当研究所はこの軸に新しい必須ステップを課しました。バックテストの前に、まず各ペアのローリングADF検定(その2通貨が実際に共和分関係=平均回帰する均衡を持つか)をスクリーニングし、安定率(ADFがp<0.10で定常と判定される窓の割合)が50%以上のペアだけを採用する、という設計です。重要なのは、このスクリーンがリターンを一切参照しないこと——だから禁止⑦(IS結果を見た後の条件変更)には抵触しません。
結果は、バックテストに進む前に決着しました。全10ペアが安定率50%に届かず、最も高いAUDJPY-NZDJPYでも25.7%。窓サイズを60本にしても90本にしても結論は同じ。閾値を緩めても採用できるのは1本だけ。共和分が「間欠的にしか成立しない」のではなく、大半の期間で成立していないのです。

リターンを見るまでもなく、共和分の前提が崩れている以上、平均回帰戦略は成立しません。バックテスト不要で棄却です。
なぜ2020-2024のJPYクロスは共和分を結ばなかったのか。原因はJPYそのものの非定常性です(Discovery 42)。
この期間、日銀はYCC(イールドカーブ・コントロール)を維持し、2022〜2023年に修正し、2024年に利上げへ転じました。並行してFedも利上げサイクルを回しました。その結果、JPYは一つの均衡の周りを揺れるのではなく、レジームそのものを次々と移動し続けました。JPYクロスのスプレッドは共通のJPYファクターに支配されるため、JPYが非定常なら全スプレッドも非定常になるのが原理的な帰結です。AUDJPY-NZDJPYのような高相関のコモディティ通貨間ですら、共通JPYファクターの支配からは逃れられませんでした。
共和分StatArbでは、ローリングADF安定率≥50%のスクリーンを必須の最初のステップにする。ここで全落ちしたなら、それは「コストの壁」以前の問題であり、バックテスト不要で棄却できる。リターンを参照しないため禁止⑦にも抵触しない、健全かつ高速な早期ゲートである。
含意として、JPYクロス間の共和分StatArbは Full Era では禁忌。可能性が残るのはModern Era(2022-07〜、ただしN不足リスク)か、共通JPYファクターを持たない Non-JPYペアでの検証だけ——これが次研究R133の設計を直接決めた。
R131は、R125の「サンプル不足」を解こうとして、より根の深い「共和分そのものの不在」に突き当たった研究です。数を増やしても、束ねる素材(安定した共和分関係)が無ければポートフォリオは組めません。残された問いは一つ——「これはJPYが特殊だからか、それともFX日足全般の性質か?」。それを切り分けるために、JPYを抜いた対照実験R133へ進みました。
R125(検出力不足)→ R131(共和分不在)→ R133(FX日足効率性)。各研究の診断がどう深まったかを、統合記事で通して読めます。
検証条件: 対象=JPYクロス C(5,2)=10ペア/D1 ローリングADF(window=60/90, p<0.10)安定率/Era=Full(IS≤2023-07)・採用閾値50%・OOS2025封印維持。 掲載数値はバックテスト・統計検証の実測値であり、フォワードテストは実施していません。
免責: 本ページは検証プロセスと棄却記録の開示を目的とした研究ノートです。投資助言ではありません。バックテスト結果は過去データに基づくものであり、将来の利益を保証しません。FX取引には元本割れのリスクがあります。図表はすべて実データ(検証レポート)からの再描画であり、生成AIによる作画は含みません。