当研究所のエッジは月曜キャリー再開フローに集中しがちで、探索規律(v2-8)は脱・円キャリー依存を求めていました。その答えの一つが共和分StatArbです。GBPJPYとEURJPYはどちらも「JPY」という共通ファクターを持つため、適切な比率βで一方を売り他方を買えば、JPYの動きは相殺され、GBP対EURの相対価値だけが残ります。この相対価値が長期的な均衡(共和分関係)から乖離したら、平均回帰を狙ってエントリーする——円キャリーが消えても生き残る、マーケットニュートラルな軸です。
2ペア × {H4, D1} × エントリー閾値z{2.0, 2.5} の計8 config(K=8)を、GMT08–16限定・2レッグ往復4pipコストで検証しました。
最も注目したのは GBPJPY-EURJPY の D1・z=2.0(C7のみ未達)です。良い性質が次々と確認されました。
| チェック | 結果 | 意味 |
|---|---|---|
| IS | N=23 / avg +78p / PF 1.90 | 収益性あり |
| Val | N=11 / avg +130p / PF 10.73 | 検証期間でむしろ強い |
| C4 方向対称 | LONG +81p / SHORT +71p | JPY中立性を構造的に確認 |
| C5 レジーム中立 | 円安期 +64p / 円高転換期 +128p | キャリー消滅耐性あり |
| C7 Null/DSR | Null p 0.076 / DSR 0.118 | 検出力不足で FAIL |

K=8は全棄却でしたが、死因は二種類に明確に分かれました(Discovery 37)。
本命の問題は「エッジが無い」ではなく「サンプルが足りない」ことでした。D1スケールで年6〜8トレード、IS期間3.5年で N=23。これはNull model(同条件ランダム戦略1,000回以上)を有意に上回るには根本的に不足する量です。Null p=0.076(C7閾値0.05に届かず)、試行回数を織り込んだ Deflated Sharpe Ratio(DSR)=0.118(基準0.95に遠い)。つまり「高いPFが偶然でない」と言い切れません。良い性質はすべて23点の偶然かもしれない、という壁です。
もう一方は別の死に方でした。IS median(通常時の回帰益)は+33pipと健全なのに、IS mean(崩壊込みの期待値)はわずか+0.63pip——medianの1/50。Val avgは−46pip。これは少数の共和分崩壊局面で生じる巨大損失が平均を破壊している姿です。コストの問題ではなく、崩壊リスクの問題でした。ローリングADFの定常窓はわずか11%しかなく、共和分が間欠的にしか成立していませんでした。
3〜5年のIS期間での「棄却」は、「エッジが存在しない」ではなく「判別できない」を意味することがある。D1のような低頻度では、統計的に主張するためのサンプルが構造的に不足する。共和分StatArbを検証するなら、対象ペアの共和分安定性(ローリングADF)を事前に確認し、定常窓が50%未満なら崩壊リスクを疑う。
また mean と median の乖離が極大(比率<0.1)なら崩壊リスクの存在を疑い、両方を必ず報告すること(Discovery 24再確認)。GBPJPY-EURJPY D1 はRevival Officer候補——2015年以降のデータを取得してNを増やせば、再審査に値する。「数値は良かったが、証明できなかった」案件は、抹消せず保留する。
R125は、後に続くR131・R133と合わせてStatArb三連敗の第一幕です。R125は「サンプルが足りない」という診断でしたが、続くR131はそれを「10ペアを束ねる」ことで解こうとし、さらに根の深い問題(共和分そのものの不在)に突き当たります。三連敗の全体像は、専用の統合記事にまとめています。OOS2025はC7未達でGate Bに到達せず、未開封のまま封印を維持しています。
R125(検出力不足)→ R131(共和分不在)→ R133(FX日足効率性)。一敗ごとに診断が深まり、最後にStatArb軸をクリーンにクローズしました。三連敗の統合記事と、円キャリーと無相関を狙った別の生存ロジックをご覧ください。
検証条件: 対象=GBPJPY-EURJPY / AUDJPY-NZDJPY D1(共和分2レッグ)/K=8 config・往復4pipコスト・GMT08-16/C7(Null/DSR)未達で OOS2025封印維持。 掲載数値はバックテスト・統計検証の実測値であり、フォワードテストは実施していません。
免責: 本ページは検証プロセスと棄却記録の開示を目的とした研究ノートです。投資助言ではありません。バックテスト結果は過去データに基づくものであり、将来の利益を保証しません。FX取引には元本割れのリスクがあります。図表はすべて実データ(検証レポート)からの再描画であり、生成AIによる作画は含みません。