Discovery Engineの原則⑤は「レジーム変化直後だけの歪みを抽出する」ことです。市場が静かな状態から荒れる状態へ切り替わった最初の一手には、まだ織り込まれていない方向の偏りがあるかもしれない——これを4つの検出器で探りました。R114は実現ボラが低→高へ跨いだ初バー(拡張オンセット)、R116はCUSUM(累積和)による構造変化点とトレンド転換、R117は3ペアから合成したUSDファクターのモメンタム。R115はR114の機序駆動フォローアップです。
| 研究 | 検出器 | 結末 |
|---|---|---|
| R114 | vol拡張オンセット継続 | IS Δmean+2〜+5p の歪みあり → 夜間スプレッドで減衰 |
| R115 | 同・機序駆動セッション仮説 | Val 全テスト負(−2.2〜−3.6p)逆符号 |
| R116 | CUSUM / トレンド転換 | USDJPY H24 のみ mean+ だが median 負(テール駆動) |
| R117 | 合成USDファクター | 全セルでコスト負け(gate通過ゼロ) |

R114だけは特筆に値します。XAUUSD(R112)がパスすら対称=歪みゼロだったのに対し、vol拡張継続は測定可能な分布の歪み(GBPUSD H12でΔ+4.89pip、median≈meanでテール非依存)を残しました。「軸は生きている」と思わせる手応えです。しかし時間帯別スプレッド(禁止①)で計算し直すと大幅減衰し、EURUSDは2022年の高ボラ単独に起因する偽陽性、GBPUSDもPF1.15・黒字年2/4に痩せました。
最も重要な教訓は、R114→R115の1サイクルで得られました。R114で観測したIS歪みを、機序駆動の事前仮説(London/NYの実需フロー)としてR115で独立に再登録・確認したところ、IS全テスト非有意・Val全テスト負で逆転しました。R114の歪みは2020–2022のレジームに特有で、2023–2024に平均回帰へ反転していたのです。
三段で理解できます——R112(XAU=歪みすら無い)< R114(歪みはあるがIS限定・OOS消滅)< 真のエッジ(R107/R086=Val>IS)。分布の歪みのout-of-sample持続(Val独立再現)こそがエッジの本体であって、IS歪みだけで興奮してはいけない(Discovery 25確定版)。
R116はさらに別の罠を見せました。CUSUM継続でUSDJPY H24が両IS半でmean+を通過したのに、median は両半とも負——少数の巨大トレンド勝ち(2022年の介入級の動き)がmeanを押し上げていただけのテール駆動でした(Discovery 24)。そしてR117は、3ペアから合成したUSDファクターが結局は同じ価格情報の変換にすぎず、広域USDはH1で効率的に価格付けされていて取りどころが無いことを示しました。
合成USD指数も、ボラ=VIX代用も、すべて同一OHLCVの変換であり、価格効率の壁の内側にとどまる。制約は手法ではなくデータセットだった。本コーパスは価格のみ(FXペア+XAUのOHLCV)であり、真に外部の情報——金利差・COT・経済サプライズ・実VIX/実質金利——はそこに存在しない。ソースが価格である限り、どんなに加工しても「外部」にはなれない。
新しい検出器を探すときの入口ゲートも、ここで標準化された——両IS半でavg>0かつPF>1.1、かつ median も >0(Discovery 26)。レジーム特有の偽陽性(両半screen)とテール駆動の偽陽性(medianチェック)を、事前登録の前に同時に弾く二重ゲートである。
R114〜117は4連敗ですが、価格オンリーのレジーム/パス/ファクターという汎用現象を体系的に潰し切った建設的な打ち止めでした。「価格データの中にはもう汎用エッジは残っていない。生存エッジは一貫して特定キャリー/セッション構造(R107/R086/R044系)だけだ」という地図が完成し、研究所は非価格データパイプライン(VIX・DXY実値・US金利・MOVE)の構築へ舵を切りました。失敗の体系的な記録が、次に投資すべき場所を指し示しています。
R114〜117は「価格から作るプロキシの限界」を確定させ、生き残ったのは特定の実需フローに根ざしたロジック(R107/R086/R044系)だけでした。検証を生き延びたプロダクトと、外部データ探索へ続く棄却記録をご覧ください。
検証条件: 対象=FXメジャー(EURUSD/GBPUSD/USDJPY)/ボラ拡張オンセット・CUSUM・トレンド転換・合成USDファクター 4研究/両IS半×median二重ゲート・時間帯別スプレッド適用・OOS2025封印維持。 掲載数値はバックテスト・統計検証の実測値であり、フォワードテストは実施していません。
免責: 本ページは検証プロセスと棄却記録の開示を目的とした研究ノートです。投資助言ではありません。バックテスト結果は過去データに基づくものであり、将来の利益を保証しません。FX取引には元本割れのリスクがあります。図表はすべて実データ(検証レポート)からの再描画であり、生成AIによる作画は含みません。