研究所TOP棄却アーカイブ / 没ロジック詳説
R078 / R108 / R121 / R051 / R040 / R029-033 / R111 / R114-117 棄却 — 詳説カタログ

没ロジック詳説——「ダメだった」の全記録

エッジ探索は、9割が空振りです。単独記事にするほどではないけれど、捨てずに残す価値のある棄却ロジックを、 死因ごとに詳説します。並べてみると、失敗の理由はいくつかの型に収束します——コスト負け・レジーム依存・ 偽陽性・テール駆動・過剰適合。空振りの記録は、次の探索の地図になります。

対象 16研究(D1ショック〜情報量〜ボラ遷移) 検証 Python中心・多くはOOS封印維持 配布 なし(研究記録)
図1:棄却された主な探索と死因の一覧。死因は5つの型(コスト負け/レジーム依存・OOS崩壊/偽陽性/テール駆動/過剰適合)に収束する。出典:各研究の棄却レポート(Python検証ベース)。
研究探索内容死因型実測サマリ
R029順列エントロピーコスト負けIS +2.3pip(コスト3pip未達)
R051H4強体足モメンタムコスト負け全25param負(最良 −0.93/PF0.91)
R117合成USDファクターコスト負け全セルでコスト負け
R078D1ショック後の反発レジーム依存・OOS崩壊IS PF2.37 → OOS 0.80
R031/034HAR+ロンドンレジーム依存OOS −7〜−11pip
R040月末USDリバランス反転レジーム依存IS機能 → OOS PF1.02
R116CUSUMテール駆動mean正・median負
R121ゴトー日 仲値リバーサル偽陽性IS D=+1.25(逆符号)/p0.503
R032シンボルダイナミクス偽陽性Bonferroni後 全非有意
R108ロンドン指値ディップ(非JPY)逆選択4/32本のみ正(最良+0.80)
R114–116ボラレジーム遷移ボラ軸打ち止めΔ+2〜+5pip → Val逆符号
R111指値版EA(COMP-079B)過剰適合IS PF3.65 → Val 1.03
R033DFA Hurst救済保留2025未実施(Revival候補)
R109/110部品抽出Component 2件

01コスト負け型 — 歪みはあるが3pipに届かない

R029(順列エントロピー)はIS平均+2.3pip。統計的な偏りは検出されたものの、スプレッド+スリッページ(約3pip)に届かず、 コスト控除後にエッジが消えました。R051(H4強体足モメンタム)に至っては、体比率×ATR比の 全25パラメータで平均がマイナス(最良でも−0.93pip/PF0.91)。H4の強い実体は「継続」ではなく「過伸び→平均回帰」のサインでした (将来は逆張り方向で再検討の余地)。

02レジーム依存・OOS崩壊型 — 特定の期間だけ機能した

R078(D1単発ショック後の反発)はIS PF2.37と有望でしたが、OOS(2025)でPF0.80に崩壊。 WFAも後半4連敗で、BoJ利上げ局面の構造変化が疑われました。 R031/034(HAR+ロンドン)はOOSで−7〜−11pip。 R040(月末USDリバランス反転)はISで機能するもOOS PF1.02で崩壊。 いずれも「IS/Valで輝き、地合いが変わると消える」レジーム依存です。

mean だけでなく median を見る

平均(mean)がプラスでも中央値(median)が負なら、それは少数の大当たりに依存したテール駆動の幻 (例:R116 CUSUM)。当研究所は両IS半スクリーニング+medianチェックを標準化しています(Discovery 24/26)。

03偽陽性型 — ISでたまたま当たっただけ

R121(ゴトー日の仲値リバーサル)は主テストでIS D=+1.25pip(予測と逆符号)・p=0.503の完全null。 仲値効果はスプレッドに吸収されるか、判定時刻以前に完結していました(Discovery 30:M1データ上で検出不可能)。 R032(シンボルダイナミクス)もBonferroni補正後に全て非有意。 数を撃てばISでは“当たり”が出ます。それを発見と呼ばないための補正とNull Model比較です。

04セッション・フロー不発型

R108(ロンドンオープン指値ディップ・非JPY)はR107の指値構造をEURUSD/GBPUSDへ移植した32テスト。 IS平均がプラスだったのは4/32のみ・最大+0.80pip。ロンドンオープンの指値約定は逆選択になることを確認しました(Discovery 21)。 円キャリー以外のセッションでは、同じ構造が成立しませんでした。

05レジーム/ボラ軸の打ち止め

R114-116(ボラレジーム遷移マイニング):vol拡張オンセット継続は前方分布をΔmean+2〜+5pip歪ませたものの、 時間帯別スプレッド控除後に減衰し、follow-up(R115)はVal逆符号。R117(合成USDファクター)は全セルでコスト負け。 Discovery 27:価格由来プロキシは効率の壁を越えられない——真の外部条件付けには非価格データが要る、という結論に至りました (その先は外部データとレジーム反転へ)。

06過剰適合型

R111(指値版EA設計・COMP-079B)はISでPF3.65(特定パラメータのみ)だが、Val PF1.03(劣化比0.28)で過剰適合棄却。 約定機構自体は健全(逆選択なし)で、エッジ本体がシグナル側に存在しないことを示しました(Discovery 22)。

死因は5つの型に収束する

コスト負け(R029/R051)/レジーム依存・OOS崩壊(R078/R031/R040)/ 偽陽性(R121/R032)/テール駆動(R116)/過剰適合(R111)。 「歪みがある」≠「エッジがある」。コスト・再現性・テールを通らなければ商品にはなりません。

死因の地図 — 5つの型と、そのシグネチャ ① コスト負け R029・R051・R117 歪みは実在、でも3pipの壁 ② レジーム依存 R078・R031/034・R040 ISで輝き、地合いで消える ③ 偽陽性 R121・R032 補正すると消える「当たり」 ④ テール駆動 R116(CUSUM) mean は正、median は負 ⑤ 過剰適合 R111(指値版EA) 単一パラメータだけの山 自分の戦略がどの型に近いかを先に判定すれば、同じ死に方を設計段階で避けられる。 チェック順序:コスト → レジーム → 補正後有意性 → median → パラメータ近傍。
図2:死因5類型の地図。それぞれに固有のシグネチャ(見分け方)がある——コスト負けは「gross正・net負」、テール駆動は「mean正・median負」、過剰適合は「単一パラメータの山」。出典:各研究の棄却レポート。

07救済の余地があるもの

すべてが永久棄却ではありません。R033(DFA Hurst)は有望なまま2025テスト未実施で保留(Revival候補)。 R109/110は部品(Component)2件を抽出済み(部品採用の目安「平均≥1.5pip」は各レポート記載の参考基準であり、合否を一律に決める閾値ではありません)。R114の軸自体は「歪みあり」で、機序駆動の事前仮説で再挑戦の余地があります。 研究所は四半期ごとに棄却済み研究を新ルール・指値化・新データの観点で再審査します。

空振りの記録は地図になる

没ロジックを残すことが、次の探索を速くする。

「何を試して、なぜダメだったか」を死因ごとに残すことで、同じ失敗の再発を防ぎ、探索空間の地図を更新し続けます。

検証条件: 各研究はPythonバックテスト中心(多くはOOS2025封印維持)。掲載数値は各研究のEdge Certificate(棄却レポート)の実測値からの抜粋。 フォワードテストは実施しておらず、EAの配布もありません。

免責: 本ページは検証プロセスと棄却記録の開示を目的とした研究ノートです。投資助言ではありません。 バックテスト結果は過去データに基づくものであり、将来の利益を保証しません。FX取引には元本割れのリスクがあります。 図表はすべて実データ(検証レポート)からの再描画であり、生成AIによる作画は含みません。