「勝率」と「総利益」だけでは分からないこと
バックテストレポートを開くと、勝率・純利益・取引数・最大ドローダウンなど、多くの数字が並んでいます。どこから読めばよいか迷う人も多いですが、実務では最初に確認すべき指標をいくつかに絞ると読み解きやすくなります(本記事はこの絞り込みについての編集部の見解であり、唯一の正解を示すものではありません)。
EAの品質を正確に評価するための中心的な指標は以下の4つです。この4指標を理解することが、バックテスト読解の出発点になります。
ファクター
ドローダウン
ファクター
比率
勝率が高くても、PFが低ければ利益効率が悪い。DDが小さくても、RFが低ければ回収力が乏しい。4指標をセットで読むことで、EAの本質的な強さと弱さが初めて見えてきます。
プロフィットファクター(PF)
| PF の値 | 評価 | 解釈 |
|---|---|---|
| < 1.0 | D — 損失 | トータルで損失超過。即座に除外。 |
| 1.0〜1.3 | C — 要注意 | コスト・スリッページで簡単に消える水準。 |
| 1.3〜1.5 | B — 許容 | 実用の最低ライン。取引数が多い場合は参考に。 |
| 1.5〜2.0 | A — 良好 | 安定したロジックの目安。 |
| 2.0 以上 | S — 優秀 | 高めの水準の目安。ただし取引数とセットで評価(少数だと過大評価になりやすい)。 |
※ 上表の S/A/B/C/D は合否ラベルではなく、読み解きのための参考目安です。配点内訳・判定基準(ルーブリック)・対象バージョンは戦略・取引数によって意味が変わります。単一の区分に当てはめるだけで採否を判断しないでください。
取引数が少ない(20〜30件未満)場合、PFの数値は偶然性が高く信頼できません。PFは取引数とセットで評価してください。
最大ドローダウン(DD)
MT5のバックテストレポートには複数のドローダウン指標が並びます。残高ベース(balance)と有効証拠金ベース(equity/含み損益を反映)で値が異なり、さらに absolute(残高初期値からの最大下落額)/maximal(最大の絶対下落額・率)/relative(残高に対する最大下落割合) が区別されます。含み損を抱える設計では equity ベースの方が大きく出ます。本記事で「DD」と呼ぶのは、equityベースの最大ドローダウン率(maximal/relativeに相当する%値)を指します。EAを比較する際は、どの定義の数値どうしを並べているかを必ず揃えてください。
DDと口座への影響イメージ
バックテストのDDは「過去の記録上の最大値」です。当研究所では、保守的なストレスシナリオの一例としてバックテストDDの1.5〜3倍も確認対象にします(統計的に保証された普遍的な予測値ではありません)。これを念頭に置いて設計してください。DD 20%のEAなら、最悪30〜60%のドローダウンシナリオを許容できるかで判断します。
リカバリーファクター(RF)
RF 評価の目安
RFは「PFだけ高くてDDも大きい」といったEAの問題を炙り出します。PF 3.0でもDD 40%ならRFは低く、リスクに対するリターンが非効率であることが分かります。
Sharpe比率(シャープレシオ)
計算には注意点があります。①どの頻度のリターン(トレード毎・日次・週次・月次)で算出したか、②年率化(annualize)しているか(例:日次なら √252 倍)、③無リスク利率に何を使ったか、によって同じ戦略でも値が変わります。比較時はこれらの前提を揃える必要があります。また、低頻度戦略(サンプル数が少ない戦略)ではリターンの標準偏差の推定が不安定になり、SharpeRatioの値も大きくブレやすい点に注意してください。
Sharpe比率が示すもの
| Sharpe比率 | 評価 | 解釈 |
|---|---|---|
| < 0.5 | D | リターンに対して変動が大きすぎる。 |
| 0.5〜1.0 | C | 一般的なトレード手法の平均的な水準。 |
| 1.0〜2.0 | A | 安定した運用。長期継続に向く。 |
| 2.0 以上 | S | 資産曲線が滑らかな水準の目安。取引数が少ないと過大に出やすい点に注意。 |
※ ここでの S〜D も合否基準ではなく参考目安です。とくにMT5テスターが算出するSharpeは、一般的な年率化Sharpeと算出前提(リターン頻度・年率化・無リスク利率)が異なるため直接比較できません。低頻度戦略では値が大きくブレる点にも注意してください。
4指標を組み合わせて読む
4つの指標は独立して存在するのではなく、互いを補完して使います。以下は「4指標の総合評価フロー」です。
評価の優先順は DD → PF → RF → Sharpe です。DDがリスクの「目安」を示し、PFが効率を示し、RFがバランスを測り、Sharpeが安定性を確認します。
本記事に示したPF・DD・RF・Sharpeの数値区分は、確立された「プロ基準」ではなく、あくまで読み解きのための参考レンジです。適切な水準は戦略の取引頻度・対象市場・サンプル数(取引数)に大きく依存します。とくに取引数が少ない戦略では各指標が偶然で大きくブレるため、可能ならサンプル数Nと、その指標の95%信頼区間を併せて確認し、「この数値がどの程度確からしいか」までセットで評価してください。単一の閾値を満たすか否かだけで採否を決めるのは推奨しません。
実例:Apex Predator X 6パターンの指標比較
理解を深めるために、実際のバックテストデータを使って4指標を読み解いてみます。以下はApex Predator Xの6つの設定パターン(2020年1月〜2026年4月)の指標一覧です。
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| 設定 | PF | 最大DD | RF | Sharpe | 勝率 | 取引数 | 評価 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 5% / Gap11★検証用基準 | 4.11 | 11.67% | 7.53 | 9.36 | 86.00% | 50 | S |
| 5% / Gap8 | 2.31 | 11.80% | 5.70 | 6.65 | 78.31% | 83 | A |
| 10% / Gap11 | 3.58 | 22.38% | 6.47 | 9.09 | 86.00% | 50 | A |
| 10% / Gap8 | 1.96 | 22.54% | 3.66 | 6.38 | 78.31% | 83 | B |
| 20% / Gap11 | 3.45 | 33.50% | 4.59 | 9.65 | 87.50% | 48 | B+ |
| 20% / Gap8 | 2.23 | 38.65% | 5.32 | 6.90 | 77.22% | 79 | B |
検証用基準設定(5%/Gap11)が選ばれる理由
6パターンの中で検証用基準設定に選ばれているのは「5%/Gap11」です。PF 4.11は6パターン中最高値で、最大DD 11.67%は6設定の中で最も低いリスク水準です。その結果、RF 7.53という高いリスク対リターン比を達成しています。Sharpe比率も9.36と高い水準ですが、6設定中で最も高いSharpeは20%/Gap11の9.65であり、5%/Gap11のSharpeが最高値というわけではありません(DDの小ささとPF・RFの高さを優先して検証用基準設定に選定しています)。
一方で取引数は50件と少なめです。低頻度型EAであるため、指標の統計的信頼性は中程度と理解した上で評価することが重要です。期間2020〜2026年という6年以上のデータを使って検証されている点が、信頼性を補完しています。
6設定の中で最大DDが最も小さいのは5%/Gap11(11.67%)で、次いで5%/Gap8(11.80%)が僅差で続きます。ただし1取引5%は一般に低リスクとは位置づけません(初期確認はデモまたは最小ロットを前提とします)。DDが20%台を許容できる場合に10%/Gap11も選択肢になりますが、20%設定はロジックのポテンシャル確認用であり、標準的な運用設定としては推奨されません。
LP上で直接確認する
本記事で解説した4指標すべてを、Apex Predator Xの6設定パターンについて開示しています。検証用基準設定の選定理由もLPで詳しく説明しています。
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