別研究R107は、サーバー00:00(ロールオーバー)前後の薄い板に指値(BUY LIMIT)を置いてディップを拾う構造で、検証期間でも成績が落ちない頑健なエッジでした。そこで自然な発想として、「この優れた約定構造を、もっと流動性の厚い市場——EURUSD/GBPUSDのロンドンオープン——に移植すれば、円キャリーに依存しない新しいエッジが作れるのではないか」と考えました。
これは当研究所の探索規律(v2-8:円キャリー集中の回避)にも沿った、健全な多様化の試みでした。δ(指値の深さ)5/10pip × BUY/SELL × アジア時間の圧縮フィルター有無、計32通りを事前登録し、2025年OOSは封印したまま検証しました。
結果は明快な全滅でした。IS平均がプラスだったのは32本中わずか4本、最良でも+0.80pip(p=0.35)。コスト(ロンドン時間でも往復1pip前後)を差し引けば実質ゼロです。さらに悪いことに、BUYディップ側は検証期間(Val)で avg −4.8〜−5.7pip まで悪化しました。Gate 3のRoute A(発見力)・Route B(再現)、Component Certificate(弱エッジ合成部品)のいずれの基準も、候補ゼロ。OOSは一度も開封せず棄却しました。

なぜロンドンでは成立しなかったのか。鍵は逆選択(adverse selection)です。
ロールオーバー直後の薄い板では、指値が刺さるのは単なる一時的な値の振れ(ノイズ)であることが多く、そこから実需フローで戻る——これがR107のエッジでした。ところがロンドンオープンの厚い流動性の下では、あなたの指値まで価格が逆行して刺さる、ということ自体が情報を持っています。厚い板を押しのけてまで下げてきたなら、それは続く下落(モメンタム)の前触れである確率が高い。つまり「刺さったときほど、その後も不利な方向に動く」という構造です。指値は良い時に約定せず、悪い時だけ約定する——これが逆選択です(Discovery 21)。
R107のエッジ源泉は「指値という注文形式」ではなく、ロールオーバー/東京オープンのJPYキャリー実需フローそのものでした。注文形式だけを別セッションに持ち込んでも、肝心のフローが無ければ機能しません。
実証済みの約定構造(指値ディップ)を別シグナルへ移植しても、エッジの源泉が移植先に存在しなければ機能しない。むしろ厚い流動性下では逆選択が働く。約定の良し悪しは移植できても、エッジの持続性はシグナル固有である。
非JPYのH1イントラデイ・リバージョンには、コスト控除後のエッジが無い(Discovery 19と整合)。非JPY軸を探索するなら、D1以上のスケールか、ブレイクアウト/継続方向で設計すべきである。
R108は事前登録32テストを最後まで実行し、OOS2025を一度も覗かずにクリーンに棄却しました。「数字が出るまでフィルターを足す」ことを禁じる規律(禁止⑧)を守った結果、暗黙の多重検定による偽の成功を作り出さずに済んでいます。円キャリー脱却という動機は正しく、負け方も正しい。同じ「約定構造の移植」を別の角度から試したR111(指値版EA)も同じ結論に至り、二つの独立した記録がDiscovery 21/22を裏付けています。
当研究所は、棄却した研究と同じ規律でプロダクトを検証しています。各EAの検証ランク・MT5実機の成績・正直な弱点はプロダクトページに開示しています。失敗の記録を読んだうえで、生き残った検証をご覧ください。
検証条件: 対象=EURUSD/GBPUSD/構造=ロンドンオープン指値ディップ(R107移植・δ5/10pip×BUY/SELL×アジア圧縮)/事前登録32テスト・OOS2025封印維持。 掲載数値はバックテスト・統計検証の実測値であり、フォワードテストは実施していません。
免責: 本ページは検証プロセスと棄却記録の開示を目的とした研究ノートです。投資助言ではありません。バックテスト結果は過去データに基づくものであり、将来の利益を保証しません。FX取引には元本割れのリスクがあります。図表はすべて実データ(検証レポート)からの再描画であり、生成AIによる作画は含みません。