研究所TOP棄却アーカイブ / RESEARCH-050
RESEARCH-050 棄却 — REJECTED

Pythonで PF 4.9 だった戦略が、
MT5 Strategy Testerで 実行率 5.7% になった話

月曜の朝、東京市場が開く最初の1時間(GMT00:00)に、日本の機関投資家のキャリー再開フローを狙う——。 Pythonバックテストでは全ペアでPF 4〜5、しかも未来データ(OOS)が過去データ(IS)を上回るという「過学習の逆」の理想的な成績でした。 それでもこのロジックは棄却されました。固定スプレッドのバックテストでは原理的に見えない構造が、Strategy Tester照合(トレード単位照合)で姿を現したからです。

対象 GBPJPY / EURJPY / NZDJPY / AUDJPY 時間軸 H1(週次・月曜のみ) 死因 GMT00スプレッド+逆選択 検証 2020–2025・MT5 Strategy Tester照合(トレード単位照合)済
Python理論 OOS PF
4.00 – 5.21
理想約定・固定2pip。全ペア・全年黒字
MT5 PF(Strategy Tester)
0.42 – 2.26
現実約定。3ペア中2ペアが損益分岐割れ
エントリー実行率
5.7%
GBPJPY。シグナルの94%が約定できず

01仮説 — なぜ「勝てる」と考えたか

日本市場は月曜GMT00:00前後に週明け最初の取引を始めます。生命保険・年金基金といった機関投資家が、 外貨建て資産を週初に積み増す——つまりJPYを売ってクロス円を買うフローが、この時間帯に集中するという仮説です。 先行研究のRESEARCH-044(月曜GMT01)が機能していたため、「その1時間前を捉えれば、より早い段階の強いフローを取れるのではないか」と考えました。

エントリーは毎週月曜GMT00:00のH1バー始値でBUY、決済は1時間後のGMT01:00。保有はわずか1時間。方向はJPYクロス買いのみです。

02Python検証 — 理想的すぎる成績

固定スプレッド2.0pip(夜間想定)でのバックテストは、棄却が信じがたいほど良好でした。 4ペアすべてでプロフィットファクターが3〜5、そしてIS→Val→OOSで平均利益が単調に増加—— 通常の過学習戦略は未来データで崩れますが、この戦略は逆に未来ほど強く見えました。

出典:RESEARCH-050 Edge Certificate(理想約定2pip固定/IS 2020–2023・Val 2023–24・OOS 2025)
ペアIS avgVal avgOOS avgOOS PFNull上位
GBPJPY+10.33p+11.01p+13.25p4.003.6%
EURJPY+7.47p+8.79p+11.89p4.844.0%
NZDJPY+6.46p+6.70p+9.40p5.214.6%

ランダム戦略1,000回シミュレーションでも上位3〜5%(z=3.0〜3.4)に位置し、ウォークフォワード分析もEURJPYで4/4窓通過。 統計的には、これは「本物のエッジ」の顔をしていました。ここで満足して商品化していたら、購入者に届くのは機能しないEAでした。

03MT5 Strategy Tester — 崩壊

当研究所はPythonで好成績が出たロジックを、必ずMT5 Strategy Tester(ICMarkets・現実スプレッド)で照合します。結果は明確でした。

RESEARCH-050 Python理論PFとMT5 PF(Strategy Tester)の比較棒グラフ。理論PF4〜5に対し MT5 Strategy Tester は0.42〜2.26。
図1:Python理論(OOS)と MT5 Strategy TesterのPF比較。理論で4〜5だったPFが、現実約定ではGBPJPYを除き損益分岐(PF=1.0)を割り込んだ。各ペア下の実行率も併記。出典:RESEARCH-050 Edge Certificate / MT5バックテスト(ICMarkets・現実約定)。

EURJPYはPF 0.71、NZDJPYは0.42。最も粘ったGBPJPYでもPF 2.26ですが、その代償は実行率5.7%—— シグナルが出た月曜の94%で、そもそも約定できていませんでした。スプレッド制限を緩めて実行率を16.7%まで上げると、今度はPFが1.10まで低下します。

04崩壊の機序 — 固定スプレッドBTに見えないもの

原因は単純で、しかし固定スプレッドのバックテストでは原理的に検出できないものでした。 GMT00:00前後のJPYクロスは、流動性が薄くスプレッドが常態的に5〜10pipに開きます。Pythonが想定した2pipの2.5〜5倍です。

想定スプレッド2pipに対し、GMT00実測スプレッドは5〜10pipであることを示す棒グラフ。
図2:Pythonが想定したスプレッド(2pip)と、GMT00:00前後の実測スプレッド(5〜10pip)の乖離。平均+10pipの理論エッジは、このコスト差で消滅する。出典:ICMarkets実測(GMT00前後のJPYクロス・スプレッド常態域)。

さらに悪いことに、ここには逆選択(adverse selection)の構造があります。スプレッドが狭い週は方向性がクリーンで勝ちやすい一方、 スプレッドが広い週は値動きが不確かで負けやすい。スプレッド上限を緩めて約定率を上げると、条件の悪い週ばかりを拾うことになり、損益が悪化します。 固定スプレッドのバックテストは、この「良い週だけ約定し損ねる」非対称性を一切再現できません。2024〜2025年には実行率が4%まで低下し、構造的な悪化も確認されました。

この棄却から生まれたルール(禁止⑬)

GMT00:00直後のJPY系クロスペアは、H1バー始値を約定価格として使用してはならない。実スプレッドを必ず実測し、 5〜10pipを想定した感度分析でPFを再評価する。MaxSpread設定による逆選択バイアスを定量評価する—— この戦略の失敗は、当研究所の検証プロトコルに恒久ルールとして組み込まれました。失敗は記録され、次の研究の盾になります。

05そして — 1時間後のロジックは生き残った

興味深いのは、この棄却が「東京キャリーフロー」という仮説そのものを否定したわけではない、という点です。 崩壊したのはGMT00:00という時刻でした。流動性の薄いロールオーバー直後ではなく、市場が立ち上がった1時間後のGMT01:00では、 スプレッドは正常域に戻り、同じキャリー再開フローが現実に約定可能な形で残っていました。

その GMT01:00 版が、MT5 Strategy Tester照合(トレード単位照合)まで通過して当研究所のプロダクトになっています。 R050(GMT00)の棄却は、RESEARCH-044RESEARCH-068(GMT01)が本物だと確認する作業そのものでした。

この研究を生き延びたロジック

崩壊したのは「時刻」だった。1時間後のフローは、MT5 Strategy Testerで生き残った。

GMT01:00 の東京キャリー再開フローを実装し、MT5 Strategy Tester照合(トレード単位照合)まで通過した検証済みEA。R050で学んだスプレッド・逆選択の罠を回避した設計です。 各EAの検証ランク・Strategy Testerの成績・正直な弱点はプロダクトページに記載しています。

検証条件: プラットフォーム=MT5(ICMarkets, ICMarketsSC-MT5)/対象=GBPJPY・EURJPY・NZDJPY・AUDJPY/時間足=H1/ 期間=2020-01〜2025-12(IS 2020–2023 / Val 2023–24 / OOS 2025)/テストモデル=現実約定(実スプレッド・スリッページ)/ Python理論値は理想約定(固定2.0pip)。掲載した数値はすべてバックテストの実測値であり、フォワードテストは実施していません。

免責: 本ページは検証プロセスと棄却記録の開示を目的とした研究ノートです。投資助言ではありません。 バックテスト結果は過去データに基づくものであり、将来の利益を保証するものではありません。FX取引には元本割れのリスクがあります。 図表はすべて実データ(検証レポート・MT5バックテスト)からの再描画であり、生成AIによる作画は含みません。