研究所TOP棄却アーカイブ / RESEARCH-024
RESEARCH-024 棄却 — REJECTED

Python PF 4.5 の月曜ギャップ閉め戦略が、
MT5 Strategy Testerで PF 0.78 になった話

月曜朝の週初ギャップ——金曜の終値と月曜の始値の差——を狙って、そのギャップが週内に閉まっていく動きに乗るシンプルな戦略。 5ペアでPF3〜5、OOSがISを上回る理想的なバックテスト成績でした。 しかしMT5 Strategy Testerではギャップは最初の15分で40%消え、同時にスプレッドが最も広くなるという二重の罠に阻まれ崩壊しました。 この失敗が、当研究所の「現実約定主義」の原点です。

対象 GBPJPY / EURJPY / AUDJPY / NZDJPY / GBPUSD(5ペア) 時間軸 H1(週次・月曜のみ) 死因 高速ギャップ減衰 + 広大スプレッド(禁止⑩⑪) 検証 2020–2025・MT5 Strategy Tester照合(トレード単位照合)済
Python理論 OOS PF(ポートフォリオ)
4.85
理想約定・固定スプレッド。全ペア・全年黒字
MT5 PF(Strategy Tester)
0.78
成行・現実約定。損益分岐割れ
ギャップ消失速度
40% / 15分
エントリーポイントが実市場に存在しない

01仮説 — なぜ「勝てる」と考えたか

週末の市場閉鎖中に世界各地で起きたニュースや経済指標の発表は、月曜のオープン価格に「ギャップ」として凝縮されます。 しかしその乖離は長続きしない——週末前の均衡価格に戻る平均回帰力が働くはず、という仮説です。

具体的には、月曜始値と金曜終値の差(ギャップ)が一定幅を超えた場合、そのギャップが週内に閉まる方向へエントリー。 最大48時間保有、ストップロスはギャップの2倍、テイクプロフィットは金曜終値(ギャップ完全閉め)とする設計でした。

02Python検証 — 多ペアで安定した好成績

IS期間(2020–2023)でのポートフォリオPF=3.23、OOS(2025年)でPF=4.85——OOSがISを大幅に上回るという 「過学習の逆」とも呼べる理想的な成績でした。単年で赤字になる年もなく、WFA(ウォークフォワード)も通過。 5ペアそれぞれで機能しているように見えました。

出典:RESEARCH-024 Edge Certificate(理想約定・ペアごとのmin_gap最適化・IS 2020–2023 / OOS 2025)
ペアIS avgIS PFOOS avgOOS PFWR%
GBPJPY+21.1p3.10+27.3p4.1589.6%
EURJPY+10.9p3.08+16.8p3.7786.4%
AUDJPY+6.2p1.73+11.0p2.7388.4%
NZDJPY+19.6p3.47+16.0p3.0385.4%
GBPUSD+5.8p1.68+10.8p5.1692.4%

ポートフォリオ合算の勝ち週比率はISで81.8%、OOSで87.7%。 数字だけを見れば、これはPlatinum昇格圏の成績でした。

03MT5 Strategy Tester — PF 4.5 から 0.78 へ

当研究所はPythonで好成績が出たロジックを、必ずMT5 Strategy Tester(ICMarkets・現実スプレッド)で照合します。 結果は1行で表現できます——理想約定PF 4.50 → MT5 PF(Strategy Tester)0.78。損益分岐(PF=1.0)を大きく割り込みました。

RESEARCH-024 Python理論PF 4.50対MT5 PF(Strategy Tester) 0.78の棒グラフ。指値版は未実施。
図1:Python理論PF(理想約定・固定スプレッド)とMT5 PF(Strategy Tester)(成行・現実約定)の比較。理論値の4.50に対しMT5 Strategy Testerは0.78。指値版の再設計は実施したが合格ラインに届かずRejected。出典:RESEARCH-024 Edge Certificate / MT5バックテスト(ICMarkets・現実約定)。

04崩壊の機序 — 二重の罠

なぜここまで差が開いたのか。原因は互いを補強する2つの構造にありました。

罠①:ギャップは最初の15分で40%消える

月曜オープン直後、ギャップは急速に埋まり始めます。最初の15分だけで約40%が消滅します。 Pythonバックテストは「月曜1本目のH1バー始値」で約定したと仮定していましたが、 その瞬間(GMT00:00:00)はFXのロールオーバー時刻——実際には市場が閉まっており約定不可能です。 実際にエントリーできるのは数分後であり、その時点でエッジの最も美味しい部分はすでに失われています。

罠②:ギャップが最大の時刻、スプレッドも最大

月曜GMT00前後はアジア流動性開始直前の最も薄商いな時間帯。 JPYクロスペアのスプレッドは常態的に8〜15pipに達します(Pythonが想定した固定2pipの4〜7倍)。 さらに悪いことに、この「広スプレッドな週」はギャップ形成そのものが荒れており約定コストを払っても利益が出にくい。 スプレッドが狭い週はギャップが小さくシグナル発生頻度が低い——つまりどちらに転んでも不利です。

左:ギャップ減衰カーブ(15分で60%残存・禁止⑩閾値を超える)。右:Python想定2pip対GMT00実スプレッド8〜15pipの棒グラフ。
図2:(左)ギャップの残存率——15分で40%消滅(禁止⑩の30%閾値を超過)。(右)Python想定スプレッドと月曜GMT00実測値の乖離。エッジは「存在しない約定条件」で計算されていた。出典:当研究所の現実約定ルール(高速減衰エッジの15分減衰閾値)/ICMarkets月曜GMT00実スプレッド実測。

この棄却から生まれた2つのルール(禁止⑩・禁止⑪)

禁止⑩:エントリー基準時刻から15分で30%以上エッジが減衰するものは、成行・足の最良値(始値等)前提でバックテストしてはならない。 必ずエッジ減衰カーブを実測し、指値前提で再設計する。
禁止⑪:理想約定PFを昇格判定の根拠にしてはならない。理想PFはエッジの「上限」であって「実力」ではない。昇格判定は必ず現実約定PFで行う。
この研究の失敗は、当研究所のプロトコルに恒久ルールとして組み込まれました。

05ギャップ自体は消えていない

重要なのは、この棄却が「月曜ギャップ閉め」という現象そのものを否定したわけではない点です。 崩壊したのは「最初の一瞬を成行で取りにいく」設計でした。

指値(Limit Order)設計で再設計した場合、約定価格の問題は改善されます——ただし約定率が大幅に低下し、 実運用上の課題が残りました。より重要な発見として、同じ「週初の方向性フロー」を1時間後の流動性が戻った時点(GMT01:00)で捉える設計が別研究で機能することが確認されました。 R024の失敗は、後続研究が本物のエッジを発見する地図を作る作業そのものでした。

この研究を生き延びたロジック

崩壊したのは「設計」だった。週初フロー自体は、別の形で生き残った。

GMT01:00 の東京キャリー再開フローを実装し、MT5 Strategy Tester照合(トレード単位照合)まで通過した検証済みEA。 R024で学んだ高速減衰・広大スプレッド・成行の罠を回避した指値・流動性考慮型の設計です。 各プロダクトの検証ランク・Strategy Testerの成績・正直な弱点はプロダクトページに記載しています。

検証条件: プラットフォーム=MT5(ICMarkets, ICMarketsSC-MT5)/対象=GBPJPY・EURJPY・AUDJPY・NZDJPY・GBPUSD(5ペア)/時間足=H1/ 期間=2020-01〜2025-12(IS 2020–2023 / OOS 2025)/テストモデル=現実約定(実スプレッド・スリッページ)/ Python理論値は理想約定(ペア別固定スプレッド)。掲載した数値はすべてバックテストの実測値であり、フォワードテストは実施していません。

免責: 本ページは検証プロセスと棄却記録の開示を目的とした研究ノートです。投資助言ではありません。 バックテスト結果は過去データに基づくものであり、将来の利益を保証するものではありません。FX取引には元本割れのリスクがあります。 図表はすべて実データ(検証レポート・MT5バックテスト)からの再描画であり、生成AIによる作画は含みません。